人気ブログランキング | 話題のタグを見る

愛知県における絶滅危惧種の概況

野生ランを求めて知人やネット情報からあちこち走っているが、遠くへ行かなくても県内にも自生するランがある。
探してみたいとは思うがピンポイントでの場所はなかなか分からない。
根気良く歩いて偶然見つける幸運に頼るしかないのだろうか・・・。

愛知県における絶滅危惧種の概況_d0168292_16515920.jpg
今回のリストに掲載された絶滅危惧Ⅱ類以上の絶滅・絶滅危惧種は463である。
この数は、愛知県の本来の野生植物種約2,220の約21%にあたる。
準絶滅危惧種を含めた数は587で、全体の約26%にあたる。

環境省のレッドリストでは、絶滅危惧Ⅱ類以上が1,731で総数約7,000の約25%、準危惧種・情報不足種を含めた数は2,018で約29%となっており、比率としては愛知県の方がやや低めである。
この原因は、主として環境省版では対象地域の中に南西諸島、小笠原諸島などの絶滅危惧植物の割合が極めて高い地域を含むことによると思われるが、一部は不十分な数値情報をもとに評価が行われたため、どう見ても絶滅危惧植物には該当しそうもない種が混入していることにもよる。

植物群毎に見ると、園芸目的で採取されることが多いラン科、ユリ科、水草や湿地性植物の多いトチカガミ科、ヒルムシロ科、イバラモ科、ホシクサ科、カヤツリグサ科などを含む単子葉植物は、他の群に比べて絶滅危惧種の割合が高くなっている。
ラン科は特に絶滅危惧種の割合が高く、愛知県の自生種総数80のうち53が今回のリストに掲載されている。愛知県における絶滅危惧種の概況_d0168292_16544163.jpg
 


カテゴリー毎の割合を見ると、準絶滅危惧種を含めた総数587のうち、絶滅(EX)は42(7.2%)、絶滅危惧ⅠA類(CR)は58(9.9%)、絶滅危惧ⅠB類(EN)は163(27.8%)、絶滅危惧Ⅱ類(VU)は200(34.1%)、準絶滅危惧(NT)は124(21.1%)である。
一方環境省のレッドリストでは、絶滅・野生絶滅は41(2.0%)、絶滅危惧ⅠA類は523(25.9%)、絶滅危惧ⅠB類は491(24.3%)、絶滅危惧Ⅱ類は676(33.5%)、準絶滅危惧は255(12.6%)、このほかに情報不足(DD)として掲載されたものが32あり、全掲載種数は2,018である。
両者を比較すると絶滅・野生絶滅の割合は愛知県の方がかなり高く、これは対象面積の狭さと、大都市近郊という地理的な特性によるものと思われる。
絶滅危惧ⅠA類の割合は逆に愛知県の方がかなり少ないが、これは資料編で述べたように、評価手法の差によるものと考えられる。
愛知県における絶滅危惧種の概況_d0168292_170171.jpg



 減少の要因は各種毎にそれぞれ記述したが、全体としてみると開発による生育地の破壊(水の汚染による生育環境の破壊を含む)、里山の二次林や草地の利用停止に伴う遷移の進行(造林地の手入れ不足による被陰を含む)、園芸目的の採取が、植物を絶滅の危機に追い込んでいる三大要因である。愛知県における絶滅危惧種の概況_d0168292_1742279.jpg
このうち遷移の進行は、それ自体は自然現象である。しかし、遷移の進行が問題になる背景としては、その前段階として人間が生活域を拡大する過程でさまざまな遷移段階を含む本来の自然環境を破壊し、それらの植物のもともとの生活場所を奪って、彼らを薪炭林や採草地、あるいは造林地のような人為的環境に追い込んできたという経緯がある。

湧水湿地の植物にしても、治山事業等によって新たな湿地が形成される条件をなくせば、遷移に追われた植物は次の行き場を失ってしまう。このような見方をすれば、一部の先駆種的な植物以外の大部分の種については、遷移の進行も人為的環境破壊の一つの型と見なすべきである。

また、「レッドデータブックあいち2001植物編」刊行後、特に顕著になったのがニホンジカによる食害で、三河山地のところどころで林床植生が消失しつつある。
鈴鹿山脈や大台ヶ原山のような壊滅的状態になる前に、早く対策を講じる必要がある。
愛知県における絶滅危惧種の概況_d0168292_1784981.jpg
一方、環境省のレッドリストに掲載されているが今回愛知県で絶滅危惧種・準絶滅危惧種と判定されなかった植物も25種ある。
これらのうち一部は、愛知県では絶滅が危惧されるような状態ではないが全国的には減少傾向の著しい植物で、その意味で愛知県においても「全国的に危急」としてリストに掲載し、保護の対象としてよい植物である。

他の一部は、情報不足のため環境省のリストに掲載されたと思われるもので、これらは将来調査が進めば、リストから削除される可能性が高い。
しかし今回は、この両者を的確に区別するだけの資料がなかったので、「全国的に危急」というカテゴリーは設置しなかった。
これら25種については、「国リスト」としてレッドリストに掲載し、「掲載種の解説」の章では他の掲載種とほぼ同様の形式で県内の状況を記述した。
       (出典:レッドデータブック あいち 2009より転載)
                    昨日・今日の記事中の画像は、昨年
                    県下で写したものである。
by katsu-makalu | 2013-02-28 17:27