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ナンバンギセル '11.9.7

万葉集や歌学を研究した佐佐木信綱(横山大観や幸田露伴とともに第1回文化勲章を受章)は、歌集「思草」(おもいぐさ)を刊行している。
信綱が歌集の名とした思草とはどのような植物なのか。
ススキが穂を出し始める時期、根元に群がる桃色の花を見ることがある。
ナンバンギセルと呼ばれる一年草だ。
ナンバンギセルはススキなどの根に寄生しそれ単独では生きられない寄生植物。
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万葉集に詠まれている「思い草」は
「道の辺(へ)の 尾花がもとの 思い草 今さらになど ものか思はぬ」
尾花というのはススキのことですから、万葉人はススキとナンバンギセルの関係を知っていたということになります。作者不明の歌ですが、歌を詠んだ人は、ススキに寄り添うように咲くナンバンギセルに自分の姿を見出したのでしょう。
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「新古今集」では
和泉式部が
野辺見れば尾花がもとの思ひ草かれゆく程になりぞしにける
源通具は
とへかしな尾花がもとの思ひぐさしをるる野べの露はいかにと
などと多くの歌人がうたっている。
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by katsu-makalu | 2011-09-14 18:34